九度山暮らしのある日、篆刻修行の為に拡大鏡を買った。

あいかわらず月に2度篆刻の勉強に京都に行っている。まあ、篆刻の勉強も大事や
けど仲間とご飯食べたり喋ったりするのも大事なんでそれほど必死で勉強してる
わけでもない。それでも出来てしまえば絵の中に遊印として使えるんで絵に花が
できるし引き締まる。そんなこんなでボチボチと修行しつつ石の作品を作っては
いるんやけど近頃ちと不自由だ。
老眼がひどくなってきたんか、老衰で手元が危うくなってきたんか、老眼鏡をかけても
手先がよう見えへん。これはえらいコッチャ、老眼鏡変えんとあかんのやろか?
よう考えてみる。昔から皆さん篆刻をやるときには老眼でなくても拡大鏡を使ってはる。
老眼鏡をつかったら一緒やんかって考えたんやけど、そうと違うんかもしれん。
一回拡大鏡を使ってみようかって気がついた。
では、買いに行こうと言うても思いつくんは、テレビで石坂○○さんが宣伝してる
やつしかない。類似品で安いやつないやろかって思ってメガネ市○みたいなとこに
いってみても値段はネットでもさほど変わらへん。で、やっぱり目で見て選ぶのが
一番なんでお店で買うことんした。
なるほど、よう見えるやんか。すばらしい。

老眼鏡の上からかけてもいいし、そのままでもええ。
倍率は1.3、1.6で、つい最近1.9が出たんですという。
それぞれかけてみたけど、やっぱり倍率が大きいほうが良さげだ。一番大きいやつに
しよう。
焦点の調節がメガネではできへんので慣れへんと戸惑うけどじきに慣れる。
ということで早速彫ってみよう。
今回は、「漁樵耕読」の4文字。
こないだ中国、浙江省の古村の旅に行ったときにどっかの村で見かけた文字だ。
さすが中国4千年の歴史、古村といえども侮るべからず、どんな片隅にも文化の
残り香が密かに漂ってるところがあるのだ。
「晴耕雨読」と同じような意味やと思う。魚を獲ったり、樵をしたり、農作業を
しながら日々を暮らし、その合間に勉強するというくらいの意味なんではなかろうか。
篆刻には朱文、白文と2種類あって、文字のところを彫り残すのが朱文で
文字のところを彫り込むのが白文だ。今回は朱白混合で、白文の中に朱文の文字が
1文字だけ入るようにしてみよう。
さっそくメガネをかけて彫ってみる。
なるほど境目の境界線がとても見易い。
実は簡易的な拡大鏡を昔使ったことがあるんやけど、倍率が多きすぎて境界線に
余裕があると錯覚してぐいっと彫ったらポリっと全部とれてしまった。見えすぎるのも
調整が効かんのだ。
今回はとても彫りやすい。
これはええ。わりと思ったとおりできた。

早速押してみよう。

まあ、そこそこええんではないやろか?
自画自賛でしかないけど、今まではわりと細かいとこは見えへんまま勘でやってた
部分があるんで失敗が多かった。これからはもう少し楽にできるかもしれん。
期待したい。
けど技量も磨かんとあかん。
この道も先が長い。

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ありがとうございました。