最近読んだ本、「HHhH プラハ、1942年」、「真ん中の子どもたち」

  • 2017年12月2日
  • 1人

ローラン・ピネ、「HHhH プラハ、1942年」
これはすごい小説だ。傑作だと思う。一気に読んでしまった。
ドキュメンタリー風の小説には「これは小説であって事実とは異なる場合があります。」
という但し書きがあるけど、どうやらこの作品では事実を細部に渡って追いかける
ことを旨としているらしい。
いつどこにいた。その街角はどんな様子だった。その時どんな服を着ていた。
誰と会った。なんの話をした。
徹底的に資料を集める。
通常は「不明な部分も含めて自分なりの人物像を創り上げる。」もんやと思ってた
けど可能な限り、事実を積み上げるのだそうだ。
そして、そこから浮かび上がる人物と事件には迫真の緊張感が生まれるようだ。
「金髪の野獣」と呼ばれる男がいる。ナチの政権下で秘密警察、ユダヤ人弾圧の
部門でどんどん頭角を現し、ついにはヒムラーの右腕になってしまった。
男の名前はハインリッヒ、かれがどこまで残虐非道で、冷酷な悪魔のような男で
あるのか、いかに効率よくユダヤ人を狩り出し排除していくか、その動きを克明に
追う。
舞台はチェコのプラハ。とても美しい街だ。
わしも一回行ったことがある。有名なカレル橋を挟んで王宮跡と市街地に別れる。
どちらに行っても中世ヨーロッパの香りを漂わせるとても印象的な街であった。
是非もう一度行きたものだ。
ラインハルト・ハイドリヒ はとうとうこの街で強権の中枢になってしまった。
そして追い出されてロンドンに亡命政権を建てた側では、密かに彼の暗殺を狙う。
選び抜かれた2人の戦士がプラハに派遣される。
どうやって?
そしてレジスタンスの助けを借りて暗殺計画が着々と進むのか?
果たして襲撃はあるのか? 成功するのか?
方法は?
彼らはどうやって現場を離脱するのか?
成功の公算は?
息詰まる時間が過ぎていく。
読む方も息詰まる。
とても良い感じの緊張感だ。
素晴らしい。
因みに「HHhH」とは「ヒムラーの頭脳はハインリッヒと呼ばれる 」の
略語らしい。

温又柔、「真ん中の子どもたち」
前にこの人の「台湾生まれ日本語育ち」と言う本を読んで好感を持っていたんで
また読むことにした。
中国を旅行してたり、日本で知らない中国人と話する機会があったりする時に、
それが親しい間柄ではなくて、街角の食堂だったり、移動中のバスの中だったりで
殆ど通りすがりというシチュエーションで、「あんたは南方の方に人かね?」と
聞かれたりすることがある。昔は、意外と中国語が話せるやん、もうちょっとやねと
言うくらいの褒め言葉やと理解して喜んでたんやけど、もしかしたら、「あんた中国語
下手やねようわからんわ」というニュアンスに近いんちゃうやろかと最近は思うように
なってきている。
つまりかなりバカにされてるということ。
そんなことはどうでもええとして、
琴子は台湾人の母と日本人の父の間で生まれ、日本で育った。つまり、台湾語と日本語と
中国語の世界で暮らしている。
ある時、きちんとした中国語を身につけるにはと、上海に語学留学することにした。
そこには、似たような境遇の若者たちが集まっていた。
親友呉嘉玲 も一緒だ。
ボーイフレンドの彗 とは離れてくらすけど、こちらで知り合った舜哉が気になる。
そして、若者たちの青春群像が始まる。
鄭先生は厳しいけど毎日は楽しい日々だ。
しかし、言葉を巡って、心は揺れる。
アイデンティティはどの言葉に宿るのか?
言葉を選ぶことは生き様を選ぶことになるのか?
素直な子供たちの揺れる心が素直に描かれている。
そして、やっぱり国と国との問題も心痛い話だ。

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ありがとうございました。