古川真人、「四時過ぎの船」
これほど淡々として、おだやかなゆるい時間の中にいて、何と切ない、哀しい物語なのか。
「今日ミノル、四時過ぎの船で着く」
吉川佐恵子は自分が書いたノートを見た。
あらもう4時、早く迎えに行かなくては。ミノルは1人で来るの? 家族と来るの?
いや、これは今日のことではない?
いつのこと?
美穂から電話が来たのは昨日のはず?
島の古い家でひとり暮らし続けるうちに思い出すばかりの生活になってしまった。
机やテレビ、棚や仏壇。見た瞬間何かに繋がったような気がするけど、いつか
またぼんやりしていく。
ヒロシはなぜ目が見えない。
ヒロシとミノルが仲良く助け合ってくらしている。
でも一体これからどうなる?
もうなくなったけどわしの母親も晩年はこんな感じ、どこがどう一緒ってステレオタイプに
整理はできへんけど、時々湧き起こる古い記憶と、プラマイ30分くらいの生活感の
中でとまどいながら頭のどっかで一生懸命つじつま合わせをしてはったんとちゃうやろ
かと思うと、とても哀しくなる。老いとはなんなのか、認知症や認知症的なものと
おれあいながら暮らすことなんてできるのか?
淡々と老女の暮らしが語られるそのことがとても切ない。
ケイト・モートン、「湖畔荘 上・下 」
これは面白い。イギリスのコーンウォールの田園風景が目の前に見えるようだ。
行ったことないけど、見て来たように言う。
セイディ刑事は納得できない。確かにやりすぎた、ルール無視やったかもしれんけど、
母親が子供を残して忽然と消えるはずがない。何か事件があったはず?
でも、今は出勤停止、祖父の家があるコーンウォールで謹慎生活をせなあかん身だ。
しかたなくジョギングしてたら不思議な屋敷を発見。事件の匂いがする。裕福で
幸せの絶頂にあった一家が突然消え、湖畔荘という屋敷だけが残ったという。
70年前に赤ん坊がなぜ消えたのか?
一体何が起こったのか?
両親はどうなった?
姉たちはどうしてる?
セィディ刑事はこの事件にのめり込み始めた。ただの暇つぶしではない、何か
感じるものがある。この謎はきっと解けるはずだ。姉の1人はロンドンにいて、
高名な推理作家になっていた、セイディはこの姉、アリス・エダヴェイン に
連絡をとろうとする。きっと何か知ってるはず?
母、エリナ・エヴァダインが鍵を握っているのではないか?
根気よく調べるうちに事件は少しずつ明らかになっていく。そして湖畔荘の秘密も
分かって来る。どうして赤ん坊が消えることができたの?
何かがおかしい? どこかで何かが食い違ってる?
そして意外な事実が次々に。
豊かな自然と魅力的なマナーハウス。そんななかで手に汗握りミステリー。
とても面白い。
焦って本を読んで返してしまったんで写真とってなかった。
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ありがとうございました。