最近読んだ本、「幕末単身赴任 、下級武士の食日記」、「長春五馬路」、「大陸の細道」

  • 2017年10月5日
  • 1人

青木直也、「幕末単身赴任 、下級武士の食日記」
昔、「花の下影」という本を読んでいたく感動したことがある。幕末の頃、
作者不詳ではあるが、美味しいもんを食わせる店の様子を描いた画帳で、
とても素晴らしい内容だ。今はデジタルカメラがあるし、スマホがあるから簡単
やけど、食い物屋や食い物を臨場感を持って絵に描くのはとても難しい。勿論
カメラに写すのもそれなりにテクニックは必要で上手に写した写真は魅力的なんやけど、
筆と墨の時代にこういう作品ができてるのは素晴らしい感性やと思った。
真似をしょうとおもうけどなかなかできへん。
この本は、画帳ではなくて日記だ。絵はないけど暮らしが浮かんでくるし、
料理の味が浮かんでくる。
酒井伴四郎は紀州藩の藩士、今で言えば中間管理職のちょい下くらいのポジションでは
なかろうか。参勤交代のお供をして紀州から江戸まで単身赴任の旅だ。
わしも和歌山生まれやからこの時点で親近感バリバリになる。
江戸に着くまでの旅の話も面白い。台風、洪水散々な目に遭いながらも食うものは
食っている。そして江戸暮らし、下っ端役人は節約が必要だ。おいしいもんを
食うためには知恵を絞らんとあかん。上手に料理して、上手に食べる。
ところが、上司でもあり、何もせえへん叔父さんにいつも奪われてしまう理不尽にも
くじけずにあかるく生きている。
実に面白い。こういう本はもっと発掘してほしいものだ。

木山捷平 、「長春五馬路 」
図書館の本棚に並んでいるのを、「長春」という言葉に惹かれて借りることにした。
長春は瀋陽よりさらに北にある。結構大きな都市だ。元の満州国の首都の時は新京って
呼ばれてた。行った時は、偽満州国って看板がデカデカとあって、9.18を忘れるなと
言うような看板もあったような気がする、とにかく日本に対する圧力が強そうな
ところだった。終戦直後はもっと大変なとこやったと思う。戦争が終わるまえからも
そのあとからも満州やら中国、朝鮮から日本に命からがら逃げ出す、その時の大変だった
話を、いろんな本で読んできたけど、ここではそんなんがまるで嘘のように、
戦に負けた後の満州の元首都だった街の街角の風景が淡々と描かれている。どうして
こんなに飄々となれるのか、一旦地獄を見てしまったからなのか?
逃げ遅れた人たち、元々の満州の人たち、中国人、ソ連軍が攻めてくるのを怯える人たち、
共産軍と戦う国民党軍の人たち、様々な人たちと関わり合いながらギリギリの暮らしを
楽しんでるかのような爽やかささえ感じられるのがとても新鮮だった。
ある中国人の夫人の家に招かれる。成り行きでベッドに?
しかし、酔い潰れて役にたたん。枕元に李白の詩、
日々酔いて泥の如し
李白の婦に為ると雖も
何ぞ太常の妻に異ならん
「又、あとで・・」って粋な手紙が添えられて・・
これはチャンスか? ハニートラップか?
うらぶれた街角と人と人の描きかたがとてもよかった。

木山捷平 、「大陸の細道 」
「長春五馬路 」がすごい良かったんでこの本も読んで見たいと思った。
これも同じ気分が流れている。
敗戦直前の満州、長春の風景だ。
主だった人たちはもうすっかり引き上げてしまったかもしれない、逃げ遅れたかも
しれないけど、まだ日本は大丈夫かもしれないというような曖昧な切迫感の中で
暮らす人たち。
木川正平は日本での暮らしがどうにも行き詰まり満州に行って某農地開発公社の嘱託になって
文でも書いてみたらどうかと勧められるままに行ってみたら通ってしまった。
やむなく満州に渡る。日本でぐずぐずし、ようやく腰をあげて、中国に渡り、各地を
うろつきながら長春に着く。世渡りは下手なようでしたたかにつないで行くしぶとさがある。
しかし、極寒の長春の暮らしは甘くはない。仕事もなくなった。収入もない。
酒でも飲まんとやってられん。そうだ、ゴミ屋に弟子入りしてみよう。
さて、あわれな男の暮らしはどうなるのか?
こんなとこで招集されるのか?
とても面白い。

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