タンクレード・ヴォワチュリエ、「貧困の発明 経済学者の哀れな生活」
この本、メチャメチャ面白い。トマ・ピケティが絶賛なんて書いてあったんで
ちょっと学問的なとこもある異色の小説家なって思ってたらそんなことはない。
ただただ面白い。
ジェイソンは海洋生物学者だ。ある朝、事務所に出社すると巨大な垂れ幕が。
何じゃこれは、わしの一物の写真ではないか。これには間抜けで深いわけがある。
即座に会社をやめた彼は、離婚係争の中、家を手放し、ケープコッドにある
友人の別荘に転がり込む。さて彼のハチャメチャな暮らしはどうなっていく?
いや、主人公は彼ではない。
ロドニーという経済学者がいる。韓国人の国連事務総長ドン・リーの特別顧問として
貧困撲滅プロジェクトに取り組んでいる。ということは、彼はどんどん貧困を見つけ出す、
あるいは生み出して、このプロジェクトに資金を集め、投入しつづけなければならないのだ。
決して撲滅して終わってしまってはならない。そのためにはありとあらゆる知恵を絞り、
手段を講じなければならない。このプロジェクトはなくなってはならないのだ。
そのためにロドニーは世界中を走り回る。
ある時、ベトナムのハノイにいた。裏町の街角で妖しい喫茶店に入った。そこに
美し娘がいた。ヴィッキーだ。この娘を文明国に連れて来て磨いて嫁にしよう。
なんという結婚式。前代未聞ではないか。そして、パーティは新居で。それは
ジェイソンがいた別荘。人と話がどんどん入り乱れて来る。
ベトナム人の神父、タンはヴィッキーを救えるのか? ロドニーの弟はどうなる。
恋する男ジェイソンの活躍はまだか?
ガソリンスタンドの主人、スティーブの役割は?
とても面白い。
この中に実際に思い当たる人が一杯いてるんやろねえ。
多胡吉郎、「漱石とホームズのロンドン:文豪と名探偵 百年の物語」
百年以上前に漱石はロンドンに居た。その頃シャーロック・ホームズもロンドンに居た。
そんなわけはないけど、それが書かれた時代、同じ舞台が登場するのだ。
その頃のロンドンの地図はこんな具合だったらしい。
テームズ川の北側に有名な場所が集中している。川の南はできたばかりの新興住宅地
だった。やはり住むなら川の北側、東京の山手、関西の芦屋、西宮ちゅう感じかも
知れん。興味深い施設もいっぱいあるし、親しい人も沢山住んでいる。しかし、
限られた留学費用から下宿代を捻出するのは大変だ。折角いい大家を見つけても
南側に移動してしまったんではついて行かざるを得ない。シャーロック・ホームズの
もテームズの北に住んでいる。そして事件の主な舞台も北側だ。ただし、事件の
内容や登場人物によってはあえて南側に出没する場合もある。ホームズの事件の
動きと漱石の手紙や手記からくるロンドンの様子が交錯してその当時のロンドンの
街のありようが生き生きと立ち上がってきてとても面白い。
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