デイヴィッド・ミッチェル、「出島の千の秋 上、下」
長崎出島が舞台と言えば文楽の国性爺合戦やフォン・シーボルトの話が思い
浮かぶけど、ひと味違うミステリー仕立ての本だ。外国人ながら日本の事を
良く知ってるような知らないような不思議な気分になる。
ヤコブ・デズートは出島のオランダ商館に赴任した。国に残した妻は待って
くれるんやろか? 出来るなら手っ取り早くお金を稼いで本国に帰りたい。
しかし、出島にはオランダ語やオランダ医学などを習いにくる日本人が多い
中、一人の若い娘、藍場川織斗が気になってしょうがない。密かにプレゼント
をしたり、姿形をスケッチしたりとあの手この手で近づこうとしている。
この頃の出島の外国人は決められた遊女以外の女性には近づいてはいけない
と知りつつもやめられない。
折しも商館長の不正をデイヴィッドが発見し、商館長が交代することに、
デイヴィッドの立場は急速に上がっていくのか?
日本の内地では、榎本僧正という男が権力を笠に不知火山という所に比丘尼
を集め妖しげな教団を作っているらしい。
醜い火傷の跡はあるものの美しい娘織斗は、噂では、その教団につれて行か
る、あるいはもう連れて行かれたらしい。彼女の元許嫁が助けに行こうとする。
彼女の運命や如何に?
許嫁の運命はどうなる?
デイヴィッドも関わってくるのか?
一方、オランダ商館の内紛を他所に、本国ではオランダの衰退が始まっている。
もはや列強の一員とは言えない事態に、もしかしたら国がなくなるかも。
デイヴィッドやオランダ商館員の運命やいかに?
最初はタラタラした感じではあったが、途中から大スペクタクルになる。
軽くてとても面白い。
島田荘司、「新しい十五匹のネズミのフライ ジョン・H・ワトソンの冒険」
ホームズものって未だに新しい本が出版されているようだ。何か認定協会みた
いなのがあって正規もんかバッタもんか区別してるらしい。そんなやつの新し
んが出たんかなって作者を見てみたら、日本の作家だった。
この本がそういうたぐいのもんかどうかはわからんけど、元々の有名なホームズ
話を下地に話を膨らませたもののようだ。
有名な「赤毛組合」、何故赤毛の男が募集されたのか? 何故彼が選ばれたの
か? と本来ならホームズの謎解きが始まるところだが、実はもっと複雑な仕
掛けと企みがあったのだと言う話から始まる。
あれは、わざとホームズに謎解きをさせるための罠だったようなのだ。
そして、ホームズの活躍で捕まった犯人達はいとも簡単に脱獄してしまう。
ホームズは完璧ではない。
彼の推理には思い違いや思慮足らずがあるのではないか?
彼は想像以上に麻薬依存ではないのか?
すべてはワトソン博士が昔インドで関わった男達が関係しているのではないか?
「新しい十五匹のネズミのフライ」を食うというのは何の事なのか?
ネズミのフライは食えるのか?
パロディでもあり、ジョークでもあり、新たなミステリーでもある。
とても面白い。
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