「愛と哀しみと旅立ちの歌 魯迅、鴎外、ソフィア、明石、慆天と日露戦争」、
中田昭栄
図書館に本を返しに行くと、最近返却されてきた本が並んでる書棚があるんで
一応そこを覗いていくことにしてる。小説なんかの場合、書棚を全部見て回る
んは面倒くさいし、当てもなく見てても集中できへんで、結局読みたい本を見
つけるのが難しい。その点、最近帰ってきた本やったら、誰かが最近興味を抱
いたというやつやから、わしも興味をだく可能性は他の本よりは高いと思う。
それで当たる場合は多くはないが時々面白い本に出くわすことがある。
まず分厚さが目についた。その次は表紙に並んでいる名前だ。
近代日本創成期の有名な人の名前がずらりと並んでいる。おもろそうなやあ。
タイトルの通り、魯迅、森鴎外、ソフィア、明石大佐、宮崎慆天、これらの人
たちが日露戦争、あるいはその時代にどう関わって、どう生きたのか。そうい
う話がかなり克明に綴られている。魯迅や宮崎慆天たちの日本における中国の
革命活動、文豪森鴎外の軍医としての一面、それも脚気の原因についての誤っ
た認識が日露戦争に及ぼした影響。日露戦争で捕虜になったロシア将校を追っ
て日本までやってきたロシア貴族の娘ソフィアとロシア捕虜の日本での暮らし。
日露戦争を有利にするため、ロシア帝国での革命運動を支援する明石大佐が、
フィンランドの革命家たちと交流する話、等々、知らなかった話が次々に出て
きていろんな事件の背景がよくわかるようになった。
分厚い本ながら意外と一気に読んでしまうドライブ感があった。
面白い本だ。
「オールド・テロリスト」、村上龍
女房に逃げられ仕事にも行き詰まってすべてになげやりになっているセキグチ
にある日仕事の依頼が来た。有名放送局のロビーで何か事件が起こるから取材
してレポートを書けということだ。出かけて行ったセキグチの目の前で凄惨な
テロが起きる。
一体誰が? 何の目的で? 意味がわからん? 何故セキグチがレポートを頼
まれる?
疑問だらけだ。 同僚のマツノ君と調べ始める。
不思議な女性カツラギが浮かび上がった。
どうやら精神科医が関係してるらしい。
糸電話が謎を解くのか?
そして再び?
危険で妖しいテロ組織があるのか?
組織ではなくてカオスの淵のような自立協調のような不思議なテロ活動の動か
し方があるのではないのか?
妖しい大物の正体は?
原発を狙う意味とは?
サスペンスとして新鮮な視点があって、強烈な展開があって、とても面白い反
面、やや暴力礼賛的な気分をあおりかねない表現があるんとちゃうやろかと危
惧するようなところも感じられる。
話の落としどころ、落とし方にも賛同しかねる部分が多いんやけど、それはわ
しの読み込が足りんせいかもしれん。
もっとユーモアたっぷりであり得へん世界の中で、風刺的に、こんな世の中が
はらむ危険を浮かび上がらせてもらえるとわしのような素人には受け入れ易か
ったかもしれない。
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ありがとうございました。