篠田節子、「インドクリスタル」
題名に惹かれてパラパラとめくってみて、やっぱりインドが舞台で色んな事が
起きるみたいやなあと思い読むことにした。好きなアジアが舞台の本は、小説
を読むというよりは旅行記を読む感覚で読んでしまう。
舞台になっているのはどうもインド中部の山の中の村のようだ。
どんなとこやろわくわくする。
わしが最初にインドに行ったのは現役のころだった。仕事でバンガロールとい
う所に行ったのだった。仕事とはいえインドに触れられるのはとても嬉しい。
期待で一杯だった。アジアで最も混沌とした国らしい。
ガンジス河で沐浴している横で火葬して流すのだそうだ。
最先端のITと最下層の貧困がとなりあわせに同居しているのだそうだ。
カースト制度がまだ残っていて、人びとの人生はそれに縛られているのだそうだ。
街を車が走り、牛が歩いているのだそうだ。
朝から晩までカレーを食うのだそうだ。
まだまだ一杯・・・・・。
全部その通りだった。
藤岡は世界中の鉱山を巡って、特別に純度が高く巨大な水晶の結晶を探して
いるビジネスマンだ。宝石としてではない。人工衛星の打ち上げなんかに使
う高度な電子機器の中核となる素材なのだ。しかし、だんだんとそう言うモノ
が採れるところは少なくなってきた。有るとき、インド中部の山の中に巨大
なクリスタル鉱石が採れると聞いてさっそく出かけて行った。そこは少数民族
が暮らす辺鄙な寒村だった。
そこを仕切る男が藤岡に少女の売春婦を提供しようとする。
その少女はなにやら不思議な力を持っているらしい。
そしてクリスタルの鉱山を巡って、様々な事件が次々に起きる。
少女ロサはどんな魔力をもっているのか?
平和な少数民族の村に何が起きるのだ?
クリスタルはどうなるのか?
とても面白い。
やっぱり旅行記を読んでいるような気分にさせてくれた。
パトリス・ルコント、「いないも同然だった男」
作者は言わずと知れた有名な映画監督だ。この人の作品はとても好きで、よく
見ている。ユーモアとエスプリが利いた、ちょっとビターな作品が多いような
気がする。そう言う人が小説も書いてるってちっとも知らなかったけど、書店
の店頭で見つけたんで早速図書館に発注したら以外と早く順番が回ってきた。
知らない人が多いようで助かった。
存在感が薄い人って確かにいるような気がする。わしもその一人かも知れん。
よくテレビのコマーシャルかなんかで、家族が仲良くレジャーにでかけて、何
か足りないって気がつく。「何やお父さん忘れてきたんや」っていうのがオチ
になっている。
実はもしかしたらそういう存在ってすばらしいかもしれない。
誰にも注目されずに好きなことしながら暮らしていけるやんか。
ここにもそういう男がいた。
真面目に勤めてはいるけど、誰にも気にされない。いることすら意識されてな
い。実際に欠勤していても誰も気がつかないほどだ。
試しに探偵になってみようと、そのテストの為、警戒厳重な役所に入っていっ
ても誰にもとがめられずに入って出て来ることができた。
すばらしい。
しかし時には注目されたい時もある。好きな女性に存在を意識されたい。
どうしよう。
それで男はある決心をした。
ドーバーをイギリスからフランスまで泳いで渡ろう。
さて、それでどうなる?
果たして泳ぎ切れるのか?
彼女は彼を意識するのか?
えらいやっちゃと思ってくれるのか?
実に面白い。
映画も面白いけど小説もすばらしい。
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ありがとうございました。