山本兼一、「花鳥の夢」
前に、「夢をまことに」を読んで面白かったのでこの作家の作品をチェックし
てみた。すると、狩野永徳の事を描いたこの本があったので早速読んでみたのだ。
とても面白い。長谷川等伯の本は2冊読んだことがある。ライバルと言われる
狩野永徳のことを描いた本はあまり無いように思う。非常に興味深い。
永徳は画家集団、狩野家の長男に生まれた。祖父のDNAを大きく受け継いだの
か子どもの頃から絵がうまい。瞬く間に天才とも言える技量を身につけた。
この頃は戦国時代の真っ最中。京の街は栄枯盛衰が慌ただしい。
貴族だけを相手にはできへん。新興の武家にも顧客が必要だ。しかし、武装
戦闘集団の武家が芸術を理解してくれるのか?
幸いあの強烈、苛烈な信長に洛中洛外図が気に入られたようだ。安土城の装
飾画を任される。
次は秀吉に。
一門は順風満帆だ。
しかし、一人のアーティストとしてこれでいいのかと言う悩みもある。
そんな時に強烈なライバルが出現する。長谷川等伯だ。
彼が出来へん発想で、描けない絵を描く。
負けてられへん。むかつく。
さてこれからどうなっていく。
とても面白いけどかなり気になる部分がある。
何故か、今の風潮に合わせてなのか、等伯がええもんで永徳が悪もんの役割
のように描かれてる。栄耀栄華は永徳で真の実力者は等伯みたいな感じだ。
でもわしはそうではないと思う。
確かに侘び寂につながる日本的な心の表現に等伯らしさはあると思うけど、
総合的な実力は永徳の方が上だと思う。
などなどと考えさせられた。
磯崎憲一郎、「電車道」
最初は鉄っちゃんが好きそうな内容の本なんかなあって軽く考えてた。それな
らそれで旅の話が沢山でるやろし面白い。
そう思いつつ読み始めたら全然ちゃう。
電車なんか何も関係なさそうや。何やわからんわって思いつつどんどん引き込ま
れる。ちゃらっとした話のようで重い話だ。
ある日男が突然家を出る決心をする。親の代から続く家業を捨て、家族を捨てて
想ったそのまま家を出た。そして山の中の貧しい農村に行き着いた。
そこで見つけた洞窟で男は暮らし始める。
何もない暮らし。
いつか男は村の子ども達、村の暮らしとなじみ始める。
それから何年も過ぎた。
ある日、村に線路が引かれることになった。
又別の話。
ある日男は電力会社に勤めることになった。山の中の発電所の現場に派遣される。
そこで外国人技師の妻に恋をした。女は結核を患って死んでしまう。
失意の男は街に帰った。
関東大震災が勃発した。
男は鉄道を敷こうと思った。
・・・・
橋を架け山を切り開き、四六時中ひっきりなしに電車を走らせよう。そうすれば
この国の人間たちも、絶望の淵からほんの何歩かは引き戻されるはずだから
・・・・本文より。
鉄道は敷かれるのか?
洞穴暮らしの男はどうなるのか?
エキセントリックでひたむきな男達の物語のようでもある。
男達の冒険の物語のようでもある。
とても面白い本だ。
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ありがとうございました。