最近呼んだ本、「海賊と呼ばれた男、上、下」、大晦日を笑う『世間胸算用』

  • 2015年4月4日
  • 1人
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百田尚樹、「海賊と呼ばれた男、上、下」
この本、とても人気があるらしく図書館に申し込んでから順番が回ってくるま
で1年近くかかったんとちゃうやろか。分厚いやつが一遍に2冊やってきた。
大事に読まんとあかんなあって思うけどすぐに読んでしまった。人気の本だけ
あって確かに面白い。何よりも主人公がすごい。明らかに某大企業の創業者の
伝記ものなんやけど、その人の実在感に説得力があるのだ。時代背景もわしら
の世代と重複するところが多々あるので、思わずそやねんと膝を打ったり、危
機に当たっては我が事のようにはらはらして応援したりしている。
しかし、読み終わった後振り返ってみれば、良い作品を読み終えた時のような
静かな充実感だったり厚く重いもんやったり、いろんな手応えが湧いてこない。
何故なんやろ。
もう大分前になるけど、東京に行ったついでに出光美術館に行った事がある。
一番見たかった仙涯のコレクションはその時は殆ど展示されてなかったんで
残念やったんやけど、水墨画ではなかなか良いものが展示されていた。しかし、
大企業の創業者がお金にあかして集めたコレクションのわりには、おのれの美
意識に対する飽くなき執念みたいなもんが感じられへんなとか下らんことを考
えながら見てたけど、この本をよんで、経営者としての生き様はすごかったん
やなあって思った。
いっそ小説よりはノンフィクションで書いて貰った方が分かり易かったんとちゃ
うやろか?
小説やとやっぱりこの世にあらざるまやかしの世界が立ち上がって欲しいのだ。

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広嶋進、大晦日を笑う『世間胸算用』
井原西鶴の『世間胸算用』の解説本だ。前にブログでも紹介したけど、
「阿蘭陀西鶴」って本をよんでとても面白かったんで、原作を読んでみたいと
思った。図書館の本をネットで検索してると、まずこれが引っかかったんで、
とりあえず読んでみることにした。
これはすばらしい。
江戸時代の大阪、京都の庶民の暮らしが目の前に立ち上がってくるかのようだ。
昔は大晦日が一年の大勝負の日だった。
いろんな買い物や借金は大晦日に日に支払いをして1年の決着をつけるのがしき
たりだったのだ。そやから何とかこの日さえしのいだら又一年なっとかやって
いける。ぎりぎりの勝負の日なのだ。
そやから金のない人は腕によりをかけてあの手この手で借金取りをごまかす、
あるいは追い返す算段を考える。
なけなしの身の回りの蓑笠一個でも質に入れて金に換える。
けど金を手にしたら借金取りに渡すのは勿体ないんで遊郭に行って遣ってしまう。
どうにも金の算段ができへんようになって、お寺さんの年越し法要に逃げ込む。
えらい怖いやつから取り立てをくらってるような修羅場を見せて、他の借金とり
もびびって逃げるようにしてしまう。
金持ちから貧乏人まで様々な人間模様を見事に描き分けていてとてもわくわくする。
当時の金銭感覚や物価の感じ、格差の様子などすばらしい描写力だ。
この解説も的を得ていて読みやすい。
いきなり原書を読んでも背景がわからんとここまで入って行かれへんと思う。
こんどは他の作品も読みたいし、原本にも触れてみたい。
1 「平太郎殿」—『世間胸算用』の発見
2 十八間口の元大商人と長屋の貧民—大晦日の大坂・京のパノラマ(1)
3 始末屋の隠居と吝嗇家の隠居—大晦日の大坂・京のパノラマ(2)
4 金を貸す人と借りる人—大晦日の大坂・京のパノラマ(3)
5 京都の分限者と中層町人—大晦日の大坂・京のパノラマ(4)
6 桟敷席と土間席、母乳と摺り粉—巻三、大晦日の京都と伏見
7 悪口祭りと身の上語り—巻四、大晦日の八坂神社と乗り合い船
8 貧者の品々と金持ちの素質—巻五、大晦日の夜市と寺子屋

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