そんなにフランスパンどうするの?
チェックインをすませたからにはもう中に入っていいのだろう。しかし、中は狭いそうだし
待合室なんかあるんやろか、立って待つくらいやったらここで座っていた方がましやけど
と躊躇っていたら、もう何人かが入り始めた。係員は上に行けと指さしている。
「上に待合室があるんやな」と続いて入っていった。
2階の待合室は結構広い。ガラス越しに外を見ると、来た時は明るかったのにもう日が暮れ
かけている。帰りの飛行機が到着したところだ。
「これだと定時に帰れそうや」なんとなくベトナムの飛行機は時間に正確なんやろなあと
思っている。中国の事を悪く思っているわけではないが、遅れないのがめずらしいくらいだ。
30分、1時間はあたりまえで何時間も待つ事も良くある話だ。大陸的な性格は関係ないとは
言えないだろうがそれより、本数が多い。あの広い国でありとあらゆるところへ、ひっきり
なしに飛行機が飛んでいるのだ。あれだけの本数を飛ばしていればちょっとしたことで
遅れがでてもしかたないだろう。
待合室の真ん中くらいに座っているとどんどん人が増えてくる。トイレに行って戻って
きたら、空いている席は後ろの方だ。
「こりゃあ満員になるなあ」客は圧倒的にベトナム人が多い。
お菓子を食べたり、おしゃべりしたり賑やかだ。
「がしゃん」と音がしたのでそちらを見ると、土産物のカウンターで工芸品のネックレスを
見ていた子供が何かの拍子で床におちてばらばらと飛び散ったのだ。とくに何か騒ぎ立てる
ようなこともなく誰かが拾い集めているだけだ。前方をみると、大きな荷物を持った
若い夫婦連れが話をしている。ちょっと荷物がばらけそうになって収め直している。
その荷物って?
フランスパンだ。それもひとつやふたつではない。5つや6つどころでもない。
30個、40個ほどの大荷物だ。
「あんなにフランスパンを持ってどうするんやろ?」
「よっぽどおいしい店があるんやろか?」、「フエでしか買われへん特別なモンなんやろか?」
「家族の為に買って帰るんかなあ」
「もうすぐ旧正月やから親戚がいっぱい来るんかなあ?(行った時点で旧正月前)」
「仕入れて帰って売るんかなあ?」
「無理に飛行機で持って帰らんでもホーチミンでもいっぱいフランスパンは売ってるけどなあ」
謎は深まるばかり。
やっぱり定刻に案内があって、定刻に出発した。