女義太夫、「天網島時雨炬燵」紙屋内の段を聴いた

確か年に2回ほど、京都大学内で「環onで浄瑠璃」と言う催しがある。
女流プロが演じる本格的な義太夫が無料で聴けるということで最近は毎回参加
させて頂いている。
先日、雪が舞って風がびゅうびゅう吹く寒い日に、友人と打ち合わせと称して
昼酒をしこたま飲んで、その後残る時間は一時間半ほど、少々酔い覚ましに丁度
良い時間を過ごしたと思いきや、飲んでも飲んでも寒くて酔えない酒を腹の中に
でぼっと残したまま、夕刻になって会場に向かった。
毎回の如く盛況だ。数十人程の席がじきに満員になる。
さすが京都大学で演るという事で若い人が多い。こういう古典芸能に関心を持っ
ている若い人が多いというのはとても良いことだ。
さていつものように美人の先生の解説から始まる。
心中天網島は近松の代表作、人気の話でもあるし、曲も美しい。
しかし、しかし、とか、但しとかつけないといけない状況も沢山あるらしい。
原作のあと、改作、増補いろいろ重ねられて、演じられるのがどの版なのか
確かな決まりや
慣わしはないのだそうだ。そやから時の場合によってはどの床本が採用されるか
太夫さん次第なのかもしれない。
研究者の先生からこういう詳しい解説が聞けるのもこの会の魅力なのだ。
場内が静かになり、太夫の低いゆっくりした声が聞こえ始める。
三味線の曲にのってだんだんと商家の部屋の中の模様が立ち上がってくる。
馴染みの遊女とも女房ともうまいこといかん。八方塞がりで泣き泣き寝ている男。
やっと遊女から亭主を取り返したと思ったら、自分のせいで女が死ぬ羽目に
なってしまった。着物を売って金を工面しなんとかしないと。
話の正体がだんだんと見えてくる。
太夫の語りが熱を帯びると、わしらの気持ちもどんどん惹き込まれていく。
何ちゅう男や、いっかい死んだらどやねん。
とか、そこまでして男に尽くすか。ほっといたらええのに。
とか、一緒になってやきもきさせるのが太夫の芸の力だ。
女房の親父がやってきた。
箪笥を調べたら何もあらへん。こいつわしの娘をどんな目にあわしてるんや。
連れてかえるから離縁状書けとせまる。
そっからばたばたとこの場のクライマックスまで一気にすすんで、時間を忘れて
しまうほどだ。
それでも終わって太夫が言うには、まだまだ納得できんのだそうだ。
まだ登場人物が太夫の胎内にのりうつっていないようだ。
お師匠さんからの伝承で決まりきったものを覚えて、演ればええという話とは
違うんやね。床本を読み込んで、謡いこんで、自分の舞台を創りあげていくん
やね。
そやから人によって総て違うということなんやろう。
プロの世界は厳しいもんや。そういうプロセスの一部を垣間見させてもらった
こともありがたい経験やった。
それにしてもこの話、話の運びは実にわかりやすい。
しかし、何でこうなんねんとかそういうあたりが納得できへんし、そやそや
頑張れとか感情移入できるとこが非常に少ない。わけわからへんとこが多すぎる。
何もできへん、何の決着もようつけへんあかんたれのへっぽこ男がずるずると
まわりを巻き込んで誰もがにっちもさっちも行かへんようになる状況を作っていく。
あかんたれ側からの逆ハラスメントみたいな変な話なのだ。
そんなシュールさをおもろいと思わんとあかんのやろなあ。

gidayu131222

同じ内容であと2公演あるそうです。皆さん是非どうぞ。

2/21 19時開演  カフェ・モンタージュ(夷川通り柳馬場通り)
2/25   東京国立劇場演芸場ホール

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ありがとうございました。