高橋克彦、「東北・蝦夷の魂」
この本は小説ではない。
題名に惹かれて、東北蝦夷を主題にしたアテルイなどに関連した小説と思って
読み始めたが、関係はあるが小説ではなくて、作者が東北の蝦夷を主題に書い
たいくつかの小説の背景の解説のようなものであった。それが実に面白くて興
味深い。
蝦夷とアイヌとは全く違うのか。恥ずかしながら私は混同していた。この本を
読んで初めて違うということを知った。蝦夷とは寧ろヤマトの国に出雲を追わ
れた一族の末裔なのだ。物部氏とも深い関係がある。そういうことなら今興味
を持って読んでいる物部氏や蘇我氏の話などとの関係がすごく分かりやすくな
ってくる。「なるほど。なるほど」の世界が開けてきた。
この本は東北の蝦夷或いはそれに関わる人々がヤマト朝廷からあるいは中央政
府から差別され虐げられてきた歴史を書き綴っているのだ。
前九年の役、後三年の役、唯の源氏武者の勢力争いって思ってた。
源義経と奥州藤原氏の滅亡。
封建時代の貧困。
明治後の対外戦争の戦力。
戊辰戦争の会津攻め。
震災と原発事故。
考えれば深いものがある。もっと勉強しよう。
原田マハ、「ナンバーナイン」
図書館でこの本を借りようとしたら、「新聞記事を見てすぐ申し込みされたん
ですか?」と聞かれた。この作者が直木賞にノミネートされているのだそうだ。
「楽園のカンヴァス」を読んだときの印象ではさもありなんと思った。
この本はどうだろう。知人にすごく面白いということで教えて貰った本だ。
舞台は上海。新興成金の若い男が美術投機を舞台に巨大なマネーを動かしてい
る時に天性の美術鑑定能力を武器にその男の片腕になっていく女の物語だ。
恋有り冒険あり。迫力満点だ、読んでて気恥ずかしいくらいだ。
上海の熱気とリーロンの裏街の雑踏が目の前にまざまざと立ち上がってくるか
のようだ。
キュレータというだけあって美術の知識もすごい。
リズムがあってスピードがあって読みやすい。
でも、読んでてちょっとだけ釈然としない。
何はなんでも都合よくうまいこと行きすぎの感がある。
美術鑑賞の感覚に同意できないところがある。
話のネタもええし、舞台も申し分ないんやから、ここまでのべたべたの恋愛話
にせんかったらもっとよかったのにと思ってしまった。
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ありがとうございました。