映画、「ある海辺の詩人ー小さなヴェニスでー」を見た

心に沁みる良い映画だった。
イタリア、アドリア海にのぞむ漁師町キオッジャというところが舞台と言う。
渺茫と広がる海は霧の中へあわあわと消えて行く。時には海となり、時には
潟となる。水はどこからか流れてきてどこかへ流れて行く。時には其の中に
閉じ込められて二度と流れ出ることはないという。
遠くには遥かボスニアやユーゴに繋がる氷雪を頂いた山々が見える。
なんとまあ詩的な風景から物語が始まる。
この町に女が現れた。今や世界を席捲する中国の労働力だ。
海辺のリストランテで働き始めた。
海に暮らす男達は年金生活になっても海から離れられない。
土地の男もいれば異国から流れ着いた男もいる。
「中国人は料理がうまいな」、「なあにマルコポーロが教えたのさ」
そのマルコポーロも帰りは船の旅だ。女の故郷、福州の近くから船出したの
だ。
世界は回りまわって繋がっている。

女と男は屈原の古詩を通して親しくなっていく。
しかしよそ者に吹く風は冷たい。町の噂は次第に喧しくなっていく。
女は無事に働いて借金を返してしまえるのか?
老いて行く男の行く末はどうなるのか?

屈原、「楚辞」 離騒より
・・・
鷙(し)鳥の群せざるは
前世よりして固(まこと)に然(しか)り
何ぞ方園(えん)の能(よ)く周(あ)わんや
夫れ孰(いずれ)か道を異にして相安んぜん
心を屈して志を抑へ
尤(とがめ)を忍んで訽(はじ)を攘(はら)はん
・・ :「岩波文庫」

端午節がやってくる。
古の詩人をしのんで灯篭が流されるだろう。
今年こそ女は息子に会えるのだろうか?
男と女はそれを見るのだろうか?

ところで中国の魚釣り歌が出てくる。
日本の、”ほーほー蛍こい”みたい。
”早よおいで、ほらお前んやで、おいしいよ”

ドラマチックな展開は殆どないけど、港町のゆるやかな日常と人生を噛み締め
ながら生きていく孤独が切ない。

そんな映画に思えた。
こんなところを1人でゆっくり旅したいものだ。旅情をそそる映画であった。

是非、劇場でご覧あれ。

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ありがとうございました。