これはすごい本だ。これもある人が読んだということで文章に書かれていた情報を
パクらせていただいて読んだ本だ。
分厚い上下2巻、量もすごい。
先日読んだ張愛玲の本と実に対照的だ。藤原定家の狂言綺語の世界を思わせるような、
妖しく美しく作為に満ちたと思える張愛玲の物語りに対して、これはあくまでも正統的だ。
英文学者が淡々と語る自叙伝である。
狂言もなければ綺語もない。あくまでも現実にあったことだけが静かに語られていく。
その事実の重みがものすごいのだ。
巨流河とは中国、東北部、遼寧省の農民たちに母なる河と呼ばれる遼河の事を言うのだ
そうだ。当に日中の戦争が始まったところだ。
その故郷を追われて、日本軍の攻撃の中を戦火を逃れて逃げ惑う人達の物語りだ。
蒼穹の昴や中原の虹なんかを読んで分かった気になっている場合では無い。
中学校の生徒を丸ごと南京、重慶、楽山と日本軍の攻撃から命からがらながら避難
させていく父や、凄まじい状況の中で子を産み、育てる母、本人は戦火の寮暮らしと
物語りは進んでいく。
最後は台湾へ。
台湾では、命をかけて日本軍と正面から戦ったのは国民党ではないか。それで疲弊して
しまったところを共産軍に奪われてしまったという思いを多くの人が持っているように
思う。そういう思い事を横から語る資格はないが、そんな無念も、淡々とした文章の
中からぎりぎりと立ち上がってくる。
台湾では、日本人が退去したあと、国を立ち上げることをしないといけない。
そこでも様々な事が起こる。
中国、台湾にまたがる巨大な歴史書を読んでいる思いだ。
それにしても、物語りのちょっとしたところに、李白や杜甫や蘇東波など中国の有名な
詩人の詩がふんだんに顔をだす。
漢詩は好きだから少々は知っているつもりだが、どれも聞いた事がない。
こういう風に普段から習い、そらんじているのかと、改めて詩の世界の深さも考えさせ
られたし、そういう昔からの教育というのにも感心した。
そういう伝統は今もあるのだろうか。
もっといろいろな詩を読んで、さらっと出て来るようになりたい。
それを賛にして画を描くのだ。
今回はあじあの旅の話ではなくて、歴史の話になってしまったが、舞台は行ったところが多いので
あそこそんな凄まじい事があったのかと思い返す事も多かった。
次に旅する時はこんなことも念頭にいれて行くことにしよう。
もう少ししたら台湾にも旅をするので、良い勉強になった。
少しでも深い旅ができるようになったらいいなあ。
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ありがとうございました。