伊藤郁太郎、「美の猟犬 安宅コレクション余聞」。
大阪中之島の東洋陶磁美術館には何度も行っている。
良い陶磁器を見る基本みたいなものだ。どこか外国の美術館に行く機会があると
その前にも出来るだけいくことにしている。こういうものが本当にいいものなのかと
勉強になるのだ。同じものを何度も見ても飽きない。
良いモノにはそれだけの力があるのだ。
朝鮮李朝陶磁器、中国陶磁器にかけては日本随一のコレクションだと思うし、世界的にも
高度な水準の美術館だと思う。大阪にこういう美術館があるのは大阪に住むものの
誇りでもあるのだ。
この美術館は安宅英一氏のコレクションを元に創られたと言う。
安宅産業が崩壊した時にそのコレクションを救うために財界が協力して創設した
美術館なのだそうだ。
その安宅コレクションが生まれる歴史を追ったのがこの本だ。
安宅氏は優れたものを見つけ、真贋を見分けるこの上ない審美眼を持っていた。
そして、気に行ったものを、時間をかけてお金をかけて、あらゆる手段、手管を
つかって何としても手に入れる執念を持っていた。
その猟犬の様を、ずっとそばにいてその執念を支えて続けて来た、
時にはすばらしい、時には鬼のような、時には神のごとき、時には実に難儀な
男を見続けて来た人の回想の物語りだ。
東洋陶磁に飾られた逸品たちが何故そうなのか、どうしてここにいるのか、
世に一際優れた美術品の旅の果ての謎がよくわかって実に面白い本だ。
牧野修、「大正二十九年の乙女たち」
この本は素晴らしい文章の数々に酔わされるような文学作品とは違う。
ただただ軽いだけの読みものかと思いつつ読んでいたら意外と面白い。
だんだんと本の中の世界に引き寄せられてしまった。
実際の大正は14年までだ。29年はありえない。だからSFの世界なのか?
次々と殺人が起こる。だからミステリーなのか?
そして実に猟奇的だ。だからホラーなのか?
そのどれでもでありそうだ。
舞台は、大阪、どう読んでも南の手塚山のあたりだ。
そこの美術学校に通う4人の少女。
確か本当のお嬢さん学校も存在するなあ。
ちんちん電車も登場する。
実に親近感が湧くではないか。
美術学校の生徒達だから画を描く話もよくわかる。
それに古武道の達人少女がでてくる。古武道のことをよく知っているのか結構
それらしい戦いだ。最近古武道の本も読んだのでそれを思って楽しい。
軽く、楽しく、面白く、一気に読んでしまった。
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ありがとうございました。