バンコク、「暁の寺」

毎日寒いので、たまには暑い国の話をしたいと思います。三島由紀夫の「豊饒の海」4部作の2番目に「暁の寺」という作品があります。これを昔、読んだ事があるので、タイに仕事で行くような事が出来たとき、一度は訪問したいと思っていました。
かなり前になりますが、仕事の合間にたまたま日曜があったので、バンコクの観光をしてみたのです。まず、最初に「ワット・アルン」別名「暁の寺」に行きました。
ワット・ポー寺院のそばにある渡し場から渡し舟に乗っていきます。
じりじりと暑い日々ですが、メナム川を船で渡るのは一時爽快です。
対岸には壮麗な塔が遠目にも鮮やかに見えます。
三島由紀夫はこう表現しています。
「塔の重層感、重複感は息苦しいほどであった。色彩と光輝に充ちた高さが、幾重にも刻まれて頂に向かって細まるさまは、幾重の夢が頭上からのしかかって来るかのやうである。すこぶる急な階段の蹴込みも隙間無く花紋で埋められ、それぞれの層を浮き彫の人面鳥が支えている。・・・・」

ちなみに、「豊饒の海」は夭逝した松枝清顕侯爵の予言をたどって日本、シャム、インドをめぐり、転生輪廻の流転の中に、大正初年頃の貴族社会や上流社会の退廃と爛熟を描いた大作です。

此の塔が、暁の光を受けて、川面に輝く様は、えも言われず美しいものだと思います。

それにしても、暑い日でした。

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