口論して女将に叱られた話。
さて、前にも書いたように、行きつけの小料理屋と言っても、隠れ家的な使い方やから
仕事帰りにいつものようにみんなと飲んだ後、もうちょっとという気分で行く場合が多い。
そうなると、ほぼ毎回、結構酔っ払った状態で店に入ることになる。
わしは、あんまり酔って乱れたりはせえへんと自分では思ってるけど、他人から
見たらどうかはわからない。
この日も、けっこう飲んでいた。呼吸を整えつつ静かに飲もう。
店に入ると、いつもの常連さんがいた。
安心、安心。
この方はよく喋る。
映画の話。酒の話。政治の話。いろいろだ。
とても能弁だ。
映画をよく見てる。知識もすごい。
自分の意見を朗々と語る。とても勉強になる。わしの知らんことばっかりだ。
政治の話は同意できないことも多々あるけど、それは人それぞれ。
そのうちに、この日は来てないけど別の常連さんの話になった。
「他人の悪口は蜜の味」とよく言われる。
「他人の悪口ほど旨い酒のアテはない」とも言う。 知らんけど。
わしはついそんな気分になっていた。
いや、実は、他のことを考え始めてて、気持ちはそっちにいってる。
口だけが勝手にうごいてなにかしら悪口を言うてる。
だんだんと話が食い違ってきた。そらそうや。
なんでこんなことできるんやろ？酒のせいや。
しかし、口から出てしまったことは口に戻らない。
収め方もわからへん。
とりあえず酒を飲もう。
酒は奈良の「春鹿」純米大吟醸。とても爽やかで、フルーティな良い香り。
上品な味わいだ。
今年は特に美味しいのだそうだ。
アテは、サバのキ寿司。おからの卯の花。
女将は格別料理が上手というほどではないけど、気が効いている。酒飲みの好みを
よくつかんでる。
話の行方は剣呑だ。
われながら面倒くさい。
とつぜん、女将が一言。
「○○さん、やめなさい」
わしにも一言、「□□さん、やめなさい」
女将に一喝された。
はっと我に帰る。わしは何を考えてたんやろ？
そのままずるずると白けていく。
飲むしか無い。あきませんなあ。
ところでこの話には、オチがない。
他に誰も客が来ない夜。みのりのない話。
ダラダラした夜。
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ありがとうございました。
