九度山暮らしのある日、ある日、突然、ガン患者になってしまった話−4、3本足の怪獣になった。

3本足の怪獣になった。

手術が終わったらしい。まだボーッとしてる。えらく肩が凝って首が痛い。
意識がないあいだも体を強張らせて頑張ってたんやろか?
お腹の手術箇所はそれほど痛くない。まあ痛み止めの薬が入ってるからかもしれん。
お腹はこわばって鉄板をはめられたような感じはしてる。
腕には点滴のチューブが固定されて、胸には心臓の鼓動を拾うセンサーが貼り付けられて
尿をだすチューブもつけられて、要するに身動きできへん状態だ。
ベッドの頭を少し上げて、枕を入れてもらって少し落ち着く。それでも動ける範囲は
体を横にずらすくらい、急に窮屈な暮らしになってしまった。
ぼんやりしながらもなかなか時間が経たへん。
麻酔がどんどん切れてきて目が醒めてきたらよけい時間が経たへん。
悶々とすごしながら気がつくと喉がカラカラ、ねちょねちょになってきてる。
口から水分を入れられへんから口が乾いてくるのだ。時々看護師さんを呼んで
うがいをさせてもらうけどすぐカラカラになる。気になると余計気になる。
時々看護師さんが来て、熱を測ったり血圧を測ったりする。痛みはないかと聞く。
あんまりないというと1ー10でいうとどれくらいって聞くんで1−2くらいと答える。
10がどれくらいか経験してないんでええかげんなもんだ。
普通の点滴以外に痛み止めの点滴が別についていて、手元のボタンを押すとその液が
体に入ってくるという仕組みらしい。痛かったらいつでもそれを押してくれたら
ええよって言うけど押すチャンスがない。
時間がなかなか経たへんと思いつつも時間は過ぎて昼がすぎ夜が来る。
身動きできへんし喉がネチョネチョでとてもつらい。
夜になっても時間が経たへん。しかも眠たくならへん。朝から麻酔でぐっすり寝たあとやから
無理もないかもしれへん。しかも、22時の消灯後も夜間灯が眩しくて目に入ってくる。
要するに眠られへん。こんな辛い夜は生まれて初めてかもしれん。
悶々と夜が明けた。
まだ痛みはない。傷跡がチクチクするくらいだ。暇で辛いくらいだ。
しかし、これももうすぐ楽しみがある。午後になったら尿の管を外してくれるらしい。
待ちかねたその瞬間。体も拭いて下着や寝間着も着替えてさっぱりした。これから
自分でトイレに行ったり動いたりできる。とてもありがたい。

まあどこへ行くにも点滴つきの3足歩行ではあるが、がらがらと点滴の袋を吊り下げた
棒を引きずって歩くんではあるが、ベッドからでて自由にうごけるのはとてもありがたい。
では、早速3足歩行で出かけてみよう。
というても主な目的地はトイレやけど。
手術から1日経って、周りをうろついてみるといろんなモノが見えてくる。
周りをようみたら男の患者ばっかりやんか。
わしはかねがね不思議に思ってた。歳をとって外にいったら、なんかのサークル、
なんとか会、何とか教室、知らんとこでも勇気を出して参加してみたら大抵は女性ばっかり
なんでこんなに世の中では女性ばっかり活躍してんのやろ?
その謎が解けた気がする。男はみんな病院に居てるのだ。早々と何かの病気にかかって、
大抵はガンになって病院くらし、元気な時は企業戦士であくせく働いて、やっと引退したら
こんなとこにたむろしてる。哀しい話ではないか。
病院の廊下を点滴ぶら下げた三本足でトボトボ歩くのが成れの果てなのか。
それはともかく足繁くトイレに通わんとあかんのだ。
というのは、オシッコの出が少なかったら、再度、尿管に管を入れんとアカンと言われた。
一回一回排尿の量を測って申告せんとあかんのだ。
水は飲まれへんけど、点滴の中に水分が含まれてるんでしょっちゅうオシッコがでる。
しょっちゅうトイレに通っていると彼方此方の病室の人間模様が見えてくる。
わがままな人。
深刻な人。
ワケワカラン人。
いろいろだ。

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ありがとうございました。