最近読んだ本、「イラクサ」、「鉄童の旅」

  • 2014年6月9日
  • 2人
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アリス・マンロー、「イラクサ」
筋萎縮性側索硬化症(ALS)って大変な病気だ。難病奇病の割には意外と他人
事ではない。例えばホーキング博士もそうやし、こないだと知事選問題の時に
話題になった人もそんな感じやし、けっこう近くにいてはる。わしの近くでも
昔、サラリーマン戦士、出生街道まっしぐらだった叔父がある日突然この病気
を宣告されて、数年の闘病のうちに若くして仕事からも人生からも退場してし
まった。
そういう病に犯されて、尊厳のある生の道が閉ざされたと自覚した男が尊厳あ
る死を選ぶという話から始まる短編集だ。
田舎の町に女が居た、若くもなく年寄りでもない。美人でもなく魅力的でもな
かった。ある日、町で唯一つのドレスショップに女がやってきた。特別の意味
がありそうなドレスを一着買った。なんとなく嬉しそうだ。聞けば遠くの町に
家具を送って、そこに暮らしに行くのだそうだ。男が1人待っているみたい。
知らない町、見たこともない男。男の手紙だけが頼りだ。
この手紙、ろくでもない不良娘達が勝手に書いたラブレターだった。果たして
この女どうなるのか。
とても仲の良い老夫婦がいた。穏やかで幸せな暮らしだ。しかし、妻の様子が
どうもおかしい。アルツハイマーに犯されているようだ。とうとう施設に入る。
夫は毎日のように見舞いに行く。優しく迎える妻。
ある日、妻は夫に嬉しそうに新しいボーイフレンドを紹介してくれた。
果たして夫はどうなるの?
よく珠玉のような短編集っていうのがある。美しい文章で美しい心象風景を書
き綴ったやつだ。
この短編集はそういうものではない。
もっとざらついたやつだ。
読んでいて不安にさせられる。ビターな気分を運んでくる。
それでもええなあって思う。そんな短編集だ。

hon140609-1

佐川光晴、「鉄童の旅」
鉄道に乗るのは大好きやけど、わしは「鉄ちゃん」ではないと思っている。し
かしもしかしたらある部分「鉄ちゃん」的なんかもしれん。子どもの頃は、実
は今でもやけど、電車やバスに乗ったら一番前に乗るのが好きやった。窓の外
を流れる景色を見てたら殆ど退屈することはない。どっか知らんとこまで、電
車や渡し舟に乗って行ってしまったことがある。どうして無事に帰れたか今で
も不思議に思うことがある。
こんなわしよりもっともっと本物の「鉄ちゃん」がいて、「鉄ちゃん」暮らし
をしている。しかしこの男、何故自分が「鉄ちゃん」になったのか、わからな
い。どうやら子どもの頃に記憶喪失になったらしい。男は自分の過去を調べ始
める。そしてある日、自分の過去を知っている人と出会った。
それを手がかりに過去の自分を追う日が始まる。
ふとした事で、「鉄童日記」というのを手に入れた。自分が書いたノートだっ
た。
男の過去は?
男の人生は?
と言うようなお話。旅の話として読んでとても面白かった。

hon140609-2

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